Memo008: Trust meから見える2つの想い
唐突ですが私は「Trust me」が好きです。
ただ、残念ながら十時愛梨は歌っていないので、このブログでは触れないつもりでした。それでは何故書こうかと思ったかといえば、tokeiさんのこの記事を読んだから。
なので、私はこの記事への自分なりの返しを書きたいと思います。
返しであるのでtokeiさんの記事に目を通して頂いた前提で話を進めたいと思いますが、大まかな論点は、
- アイドルからプロデューサーへの「Trust me」とアイドル自身の「Trust me」が含まれている
- 一番を目指す泥臭さが曲調に反映されている
- 一番を目指すアイドルの姿が描かれているが「なぜ一番を目指すのか」という点は各アイドルと担当Pに委ねられている
本当に大雑把ですが、こんな感じだと整理して、話を進めたいと思います。
■そもそも「Trust」とは
「Trust」は「信じる」という意味。ですが、日本語で「信じる」と訳す英単語には「Believe」というのもありますよね。使い分けとしてはTrustは「(人を)信頼する」、believeは「(話した内容を)信じる」というニュアンスになります。*1
つまり「Trust me」は才能や実力、個性、人となり全て含めて信頼してくれ、という意味になります。
そもそもシンデレラガールズはボイス無しテキストベースで出発したコンテンツで、カード1枚からの情報量も限られていましたよね。そんな中で一人の女の子の可能性に懸けて、一日のうちの貴重な時間を使って、人によっては大量の課金をしているわけで、まさに「Trust」が根底にあるわけです。
そしてこの曲は総選挙曲ですが、今回はデレステで投票初日に投票券500枚分が約15万円で売られましたよね。500票を即決した人なんて、まさにアイドルへの「Trust」がなければそんな決断は出来なかったと思います。
ちなみに私は第7回は今井加奈ちゃんと喜多日菜子ちゃんの支援に回っていましたが、開幕500票を入れたのも、ひとえに今井加奈ちゃんへのTrustと、そこからユニットを組む三村かな子やビビッドカラーエイジの飛躍を信じてやまないからです。
わたしもやるよ!今井加奈ちゃんに500票!!! pic.twitter.com/uzQMbPwjnP
— ながさわ (@nagasawa_p) April 10, 2018
もう1点、これは日菜子Pさんの動向を見ていて気づいた点ですが、Twitterで「ダイマください」というツイートに対して日菜子Pさんたちは真摯に喜多日菜子ちゃんを推して、それに心動かされた人が投票する場面も多々ありました。これもPからPへの「Trust」なんですよね。あなたがそんなに熱心に推す子だったら、私も信じてみよう、という。
乱暴にまとめると、総選挙の根底にあるものは「Trust」なんです。
■「挽回の準備はいいか?」
この曲の歌詞を眺めた時に一番浮いて見えた歌詞の話をします。
挽回の準備はいいか?
「挽回」というからには、何かに対して遅れを取っている状況があるはずです。でも、この曲って「総選挙での各属性上位3名から成る選抜メンバー」が歌っているわけですよ。それにこのパートを歌っているのは2位の本田未央。ほか181人より上にランクインしている人が、総選挙順位を指して「挽回」って歌ってるとしたら全方位に喧嘩を売ってる格好になっちゃうじゃないですか。
でも冒頭で「闘うことは恐れない」ってわざわざ言っている。いや、言っているということはですね、あくまでトップを目指すために闘うことを辞さない、というだけで、片っ端から辺り構わずバトルを挑んでくるような好戦家ではない、ということの裏返しだと思うんですよね。だから、きっと本田未央は181人に喧嘩を売っているわけではないはず。じゃあ、この「挽回」って何だ、というのがまず気になったんです。何に対して遅れを取っているのか、と。
ここで「挽回の準備はいいか?」の続き、「自分自身の限界突破」に注目します。
これ、どこかにありましたよね。
「ラインは自分で引かない やるなら目指せよ 「最前線」」
これと対になっていることに気づきます。
とすると「妥協点に交差する点線 その一つ一つが怠惰を斡旋」に対応するものがあるはずです。これが「後悔することは無いか? 挽回の準備はいいか?」なんじゃないでしょうか。
つまり、このラップパートは妥協から生じる諦めを乗り越えるために、自分自身を奮い立たせよう(「発火」)、という趣旨で、遅れを取っていた相手は「妥協をしなかったときの自分がいたであろう立ち位置」、挽回すべきは「これまで妥協や怯みから出来なかったこと」と解釈することが出来るんじゃないでしょうか。
総選挙曲、という立ち位置にある特殊な曲なのでどうしても「うちの子」と「他の子」の対外的な闘い、と考えてしまうところですが、アイドルが自分自身の限界に挑む自分との闘いという面が織り込まれているんじゃないかな、と思います。
■「今は」Trust me
この曲のテーマは「Trust me」
サビの終わりも「Trust me, and follow me」
でもよく見たら「今は」なんですよね。これはどういうことなのかといえば、follow meじゃない時がある、ということです。アイドルとしてデビューするにはプロデューサーが先に立ってアイドルを導いていましたよね。手間の掛かり方に多少の差はあれど、少なくともスカウトなりオーディションで彼女たちを見つけてあげる、という点がありましたよね。そんな導かれる一方だった時期との対比で、「今は Trust me, and follow me」なんだ、と。
でも「今は」って、もう一つのニュアンスを含みますよね。一時的に、とか、現時点では、とか、将来に対する不確定さを含んでいます。「今や」とか「これからは」という単語と比べるとわかりやすいでしょうか。
つまり何を言いたいかと言えば、この歌詞は「今この瞬間は Trust me, and follow me」、と捉えることも出来るんじゃないかと思うんです。アイドルが育ったからプロデューサーは何もしなくて良くなったんだよ!ということではなくて、プロデューサーの助けも必要なときもあるけれど、高みを目指そうとしている今この瞬間は、私を信じて見ていて!という気持ちなんじゃないでしょうか。
例えば、どんなに技量が心許ない新人アイドルだったとしても、ステージにPが出ていく訳にはいかないじゃないですか。ステージ袖か客席から、固唾をのんで見守るしか出来ない。それって「Trust」ですよね。でも、ステージから降りてきたら、またPがリードしてアイドルを育てていく。そうやって、アイドルとPが互いに成長させていくんだよ、ということが言外に含まれているように思えました。だって、最後に行ってるじゃないですか。「この歌声が響く限り 一緒に歩いていこう」って。
■「I am going to aim higher」
もう1点だけ歌詞で触れておきたいのがこの箇所です。
さらっと聞き流していたフレーズですがサビの冒頭は「going to higher」じゃなくて「going to aim higher」なんですよね。
また英語のおさらいですが「be going to 動詞」で「~をします/することにしています」という意味ですよね。「高いところに行くぞ」ではなく、「より高みを目指すぞ」と訳すべきなんでしょう。
そして「higher」は比較級で、今までよりも高いところ、という意味です。何に比べて高いか、というと「妥協していた目標」なんじゃないでしょうか。「やるなら目指せよ 「最前線」」って、ありますからね。
■まとめ
私は、この歌のポイントは「高みを目指すぞというアイドルの決意」と「高みを目指す私を信じて欲しいというP(もしくはファン)への思い」の2点だと思います。言い方を変えれば、「私を信じて欲しい」という気持ちと「信じられるに値する私でありたい」という2つの気持ちが込められていると考えます。
だからこそ、歌詞でPからアイドルへ向かう「Trust」が、そしてデレステのコミュではアイドルの自分自身への「Trust」が描かれているのだと思います。泥臭さが描かれているのも、信じられるに値する自分になるために限界に挑戦しないといけないからじゃないでしょうか。
異色だと言われる「Trust me」ですが、扱っているテーマはむしろシンデレラガールズらしい曲だと思います。
■余談1:「Absolute NIne」との比較
ところでトップアイドルを目指すぞ、という面が強調されている曲といえば、第4回総選挙曲である「Absolute NIne」があります。サビの歌詞に「勝ち取るの この歌で 絶対」とありますが、センターに立つ塩見周子をはじめ、一ノ瀬志希、相葉夕美、向井拓海の4人が、この総選挙でまさにボイス実装を勝ち取った点が、メタ的にも印象的な一曲です。
ところが「Absolute NIne」と「Trust me」の歌詞を見比べてみると、「Absolute NIne」では「高みを目指すぞというアイドルの決意」に軸が寄っていたことがわかります。「Trust me」で「私を信じて欲しい」というメッセージを発するに至った経緯は何か。それはやはり総選挙だから、なのかな、と思います。
例えば歌がうまくなるとか技術的な面は、極端な話、アイドルが頑張って練習すれば一人で出来るかもしれない。もしくは、もう上手ければ、Pが介入する余地が無いかもしれない。でも、総選挙ってアイドル本人が500票を入れる訳にはいかないし、票を入れてもらわないといけませんよね。アイドル本人の成長も大切だけど、そのアイドルの素晴らしさが、誰かに伝わらないと票にはならない。
1人で重課金すれば済む時代でもなければ、ガチャブで決まる時代でも無くなってきたからこそ、第7回総選挙曲としては「Trust me」というフレーズがキーワードになるんじゃないか、と感じています。
■余談2:十時愛梨の話
十時愛梨の話をします。
十時愛梨がトップを目指す理由、覚えていますか?
そう、「Pをトッププロデューサーにするため」です。
泥臭い努力といったところを感じさせない子なので「Trust me」の荒々しいサウンドとは離れた位置にいる印象がありますが、初期レアの時点で十時愛梨は既に「Trust me, and follow me」だったんじゃないでしょうか。
愛梨からPへの信頼は厚く、愛梨自身の実力というのも相当なものがあると、私は考えています。じゃあ、今何をすべきかといえば、Pが愛梨について行ってあげることなのかな、と思います。すごいアイドルである愛梨に相応しいステージを見つけてあげること、すごいアイドルである愛梨をもっと多くの人に知ってもらうこと、そういったことが必要なのかな、と。
ちなみに、愛梨が投げかけてくれたメッセージをきちんと受け取れているのだろうか、愛梨の素晴らしさを人に伝えられているだろうか、という自問自答は、この「think Airi project」というブログを作ったきっかけでもあります。これもひとつの「Trust」の形じゃないかな、と思っています。
そして、ちゃんと歌わせてあげたいと思っています。まだ歌えていない総選挙曲を、愛梨に。
※2019/1/5 タイトルのナンバリングを修正