Think Airi 010 アップルパイ・プリンセスの歌詞を見直す
十時愛梨のソロ曲「アップルパイ・プリンセス」について考えてみたいと思います。同時に、その後の発言への繋がりなどについても見てみましょう。
■「アップルパイ・プリンセス」とは
「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 013」として2013年1月23日にリリースされた楽曲で、デレステにはストーリーコミュ20話とともに実装されています。ちなみに当時のコロムビアの視聴ページはこちら。*1
アイドルマスター|THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 011〜015
リリースされた時点のことを振り返ると、第1回シンデレラガール総選挙が2012年7月下旬、1stアニバが11月で、その直後という時系列になります。
またこの曲は作詞作曲、歌唱の両面について関係者から語られている点も特筆されます。
作詞作曲に関しては、大久保博氏が2013年夏に開催された「CEDEC2013」にて解説を行っており、記事化されています。記事中に写っているスライドには「萌え」「色気」「かわいらしさ」「趣味のケーキ作り」「豊満なボディ」「無自覚なお色気」「乙女イメージ」「お嬢様・プリンセス」「天然ドジっ娘」「アップなポップス」「「突き抜け感」などの文字が並んでいます。文字化されるとなるほど、と思うところがあるんじゃないでしょうか*2。
歌唱に関しては「アップルパイ・プリンセス」時点での愛梨に合わせて歌唱されていることを、CV担当の原田ひとみさんが度々言及しています*3。
前も書いたけど愛梨の歌はアップルパイ→ピュアスノー&おねシン→絶対特権→ゴーイン&今回の曲と進化させてます。初代シンデレラですから初レコーディングは歌の拙さがあるとはいえ表現力は原石として最初からあり、場数が増え、ポテンシャルを元々持ってた子がうまくなってきてる、という私の拘り。
— 原田ひとみ@12/30年末ダチャーン祭 (@vhitomin) January 31, 2017
ちなみに原田さんが原田さんとして歌った時の歌い方はこんな感じ。参考まで。
そして考察と言えば先行研究を挙げるのがお作法ですが、ぶっちゃけ、殆どないのが実情です。検索ですぐ引っかかるレベルでは歌唱面に着眼したこちらが唯一の事例でしょうか。
アップルパイ・プリンセス (十時愛梨)のお話。:紫の人が片隅で独り言。まぁ、なんでもいいですけれど。 - ブロマガ
というわけで今回は「アップルパイ・プリンセス」の歌詞を中心にThinkしたいと思います。
■歌詞の大まかな流れについて
2番の歌詞こそよく見て欲しい
「休日、10時に起きたら今日はいい天気。君に会いたいからアップルパイを焼いちゃおう」というのがアウトラインですよね*4。ところでこの曲、デレステでは尺を縮めるために2番がカットされていますが、その間の描写を見てみましょう。
・「オーブン余熱」
・「よろしくタイマー」
・「急に携帯が鳴り王子の声」
・「揺れる思い押さえきれなくて走る」
・「パッとTea Bag買って」
・「十字路の前で馬車にのってあの街へ」
・「タイマーが鳴って冷や汗」
・「お昼の鐘 鳴り響く」
・「十時にでも解けない魔法」
ちなみに、一般的なアップルパイのレシピを見てみると*5*6オーブン余熱後に焼く時間は20分から40分程度。多く見ても1時間以内だということがわかります。2番の歌詞は1時間以内に起きた出来事だということを、まず念頭に置いておきましょう。
さて、タイマーをセットしてアップルパイを焼き始めたわけですが、王子から携帯に連絡が入ります。それで待ちきれない訳ですが「揺れる思い押さえきれなくて」街へと出かけるんですよね。何をしたかと言えばティーバッグを買って「あの街」へ出掛けちゃう、と。でもその道中でタイマーが鳴って…帰ってきたら少し焦げてる、というお話です。好きな人が来てくれるから…というところでバタバタしてしまう点が、とてもキュートでポップな歌詞ですよね。
ところで「あの街」ってどこ?
明確には示されていませんが「王子が住む街」と捉えてみると筋が通るんじゃないかな、と思います*7。なんといっても、会いたいからという理由でアップルパイを焼いちゃうくらい積極的な子ですから。それと「馬車に乗って」とありますが、馬車に乗るプリンセスと言えばやっぱりシンデレラ。シンデレラが馬車に乗って会いに行くのは、王子様ですよね。
それに、アップルパイを焼いている時間は先述の通り1時間も掛かりませんから、外出して出来ることと言えばそんなに無いはずなんですよね。王子に食べてもらうアップルパイは焼いているし、一緒に飲む紅茶は「パッとTea Bag買って」いる。これ以上必要なものといえば、王子様本人しかいない。そう、アップルパイのプリンセスは、オーブンによろしくタイマーしている間に、王子様を迎えに行っちゃったんじゃないでしょうか。とすると、タイマーの残り時間で家で待つか、自分から迎えに行っちゃうか「揺れる思い」になるのも説明できます。ただ、これは全くの推測なので、他の解釈があれば是非教えてください。
朝に飲んでたミルクティーはどうした?
さて、2番の歌詞を聴くとひとつ疑問が浮かぶと思います。
「休日 濃いめのミルクティー」を飲んでいたのに、「パッとTea Bag買って」いる。
朝のミルクティーはどうした?ってなりますよね。
切らしてしまった、と取ってうっかりさんだなぁ、というのもアリなのですが、もし切らしたわけでもなく買っていたとしたら?自分で飲んでいた紅茶とは別に、これから来る王子のために新品を用意してるってことになりますよね。しかも、パッと買ってるから迷いなく。好きなものを把握しているか、それとも「これが好きそう!」「これを一緒に飲みたい!」っていうイメージがくっきりしている、ってことなのかな、それだけ王子様のことが好きで仕方ないんだな、って思います。
うっかりさんだとしても、王子のことが好きすぎるにしても、いずれにしても可愛いですよね。
十二時でも解けない魔法
そしてこの曲でも印象的なフレーズ「十二時でも解けない魔法」がやってきます。
2番の歌詞に目を通すと気づく点ですが、この十二時、お昼の鐘が鳴り響いたタイミングを指してるんです。つまり昼の12時です。で、乗っているのは馬車(じゃないと思うけど実際には。)ですよね。シンデレラだと馬車に乗っている間に鐘が鳴って魔法が解けちゃう。でも、アップルパイ・プリンセスは「十二時でも解けない魔法」なんです。
なぜか。それは続きの歌詞が答えになります。
「君となら そう 私はプリンセス」
私はプリンセス、じゃなくって、「君となら そう」私はプリンセス。
アップルパイ・プリンセス、もっと言うなら十時愛梨がプリンセスでいられるのは、「君」がいるから、なんですよね。この「君」ですが、十時愛梨にとっては「ファン」とも言い換えられるでしょうし、「プロデューサー」とも言い換えられるでしょう。なぜなら、彼女を突き動かすパッションは、受け取った愛への感謝なのですから。
Pがいる限り、ファンがいる限り十時愛梨はアイドルであり続ける、っていうことだと、私は信じています。
ただ、十時愛梨って器用ではないんですよね。不器用というわけではないけど、ドジはするし、何かをそつなくこなすというタイプではない。愛情たっぷりだけど、ちょっと失敗しちゃってたりもする。それがワンフレーズに収まっているわけですよ。
「少し焦げた マイハート」
このフレーズも、 わたしは、とても愛おしく思います。
■2つの大きなキーワード
さて、2番を中心に語ってきましたが、2番を挟んだところにも注目すべきフレーズがあります。
「君の笑顔 見たいんだもん」
「いつでも一緒が いいんだもん」
この2つもまた、十時愛梨を象徴するフレーズだと思います。
君の笑顔 見たいんだもん
「君の笑顔 見たいんだもん」の直前の歌詞は「会いたいから焼いちゃおうアップルパイ」でしたよね。この笑顔は、アップルパイを振る舞った王子様の反応であったり、プリンセスと一緒にアップルパイを食べる王子様の笑顔なんですよね。単に王子様に会いたい、というだけでなく、私からの愛を受け取って欲しい、私と語らって笑顔になってほしい、という意味も含んでいるわけです。
なので、この歌詞は十時愛梨の優しさであったり、世話焼きなところであったり、ケーキを作ってくれるところであったり、そういったところに繋がっています。デレステでいえば[プライベート・メイド]がわかりやすいところでしょうか。以前にまとめていますので、そちらを見比べて頂けると幸いです。
Think Airi 006 フェス限SSR プライベート・メイドを推してみる - think Airi project
いつでも一緒が いいんだもん
一方、十時愛梨といえば世話焼きなだけでなく「甘えてくる」子であることも忘れてはいけません。その代表がモバマスの[プリンセス・バニー]じゃないでしょうか。なにせ、そのままそっくり引用してましたし。
2017年の誕生日演出はこんな感じ。ものすごい「一緒」押し。
あと、甘えん坊とは少し違いますが、振り返ってみるとデレステの絶対特権コミュも仲間と「一緒に」でしたよね。十時愛梨の中で「一緒」という言葉が、色々な方向に向けてキーワードになっていることが感じられるのではないでしょうか。
愛梨にとっては仲間もファンもPも「好き」な人で、その度合や方向性が少しずつ違うだけ。そして、みんな大好きで、みんなと一緒にいたい。だから、仲間には対等に励まし合っていきたいし、ファンには感謝の気持ちで色々とパフォーマンスをしてあげたいし、Pには甘えてみたい、ということなのかなぁ、と思います。
この話は、いずれ稿を改めて。
■目指せ!シンデレラNo.1のこと
ところでCinderella Masterシリーズといえばソロ曲の次に「目指せ!シンデレラNo.1」というボイスドラマが収録されるのが定番となっています。内容はラジオ番組に出演したアイドルが自己紹介をしたりテーマトークをしたりするもの。
あらすじはこんな感じ。
・「「ばばばばーん」って鳴ったらオープニングトークを始めるんだよね」
※既に始まっている ※かわいい
・「私の出番っ?!」※この時期の定番
・大学の最寄り駅(≒自分の家の最寄り駅)を言い掛けて止められる
・アイドルのオーディションは友達が勝手に応募したことが判明する
・暑いから上着を脱ぐ
・休みだったので帰省してお父さんの誕生日をお祝いしていた
・お父さんに誕生日ケーキを作ってあげた
・お母さんにブラジャーを買ってもらった話を言い掛けて止められる
・すっごい大きいケーキを作りたいっていう夢を語る
・「私のウエディングケーキ作るね!」って言ってお父さんを泣かせる
・両親が仲が良くって憧れている
・素敵な家庭が夢で家族に愛情たっぷりのケーキを作ってあげたい
・暑くなってまた脱ぐ
・アドリブ演技に挑戦1「激痛マッサージのリアクション」
・アドリブ演技に挑戦2「好きな人に愛のプレゼントを一言添えて」
・エンディングでまた脱ごうとしてワンピースであることに気づく
・シンデレラワード「メロンパン」
ここで3点、大切な要素が出てきます。
まずひとつ目は「アイドルのオーディションに友達が勝手に応募したこと」。
これ、初期レアでは描かれていなかった要素で、このボイスドラマが初出です。デレステでもまったく同じ描写がされているので、そちらで知った方も多いでしょうか。
2つめは「家族の誕生日にケーキを作っていること」。
今月(2018年12月)にデレステに追加された「十時愛梨のウワサ2」では両親の結婚記念日にケーキを作っていることが明かされていますが、誕生日だけじゃなかったのか、と思った方もいるんじゃないでしょうか。
3つめは両親が憧れの家族である点。[カップオブラブ]で理想の家族を語るシーンがありましたが、それも生まれ育った十時家の影響だったんですね。
■ジャケ写の謎 ~なぜアップルパイじゃない?~
ところで「アップルパイ・プリンセス」のジャケ写を思い出してみてください。
実は愛梨が手に持っているのはいちごのケーキなんです。
デザイン的に考えると、全体を淡い色でまとめるためにはアップルパイの茶色が重すぎるので、配色的にケーキだったんじゃないか、と思いますよね。もしくは、愛梨の趣味が「ケーキ作り」だから? など、色々と推測出来る部分ではあります。
が。
実は[CDデビュー]で言及していたんです。
なんと、愛梨特製ケーキ。自作だったんですよ、これ。
「アップルパイ・プリンセス」だって言っているのになぜケーキ?
そう思いますよね。また愛梨のうっかりなのか?と思いますよね。
いや、それがですね、親愛度をMAXにしてみると…
そう、チョコプレートの「LOVE」の文字は、Pへ向けたメッセージだったのです。
でも、アップルパイだったらチョコプレートってありませんよね。
ひょっとしてまさか、「LOVE」を伝えるためにアップルパイじゃなくてわざとケーキを作ってきたんじゃないでしょうか。「アップルパイ・プリンセス」なのに。
でも愛梨ならありうるんです。だって「感謝」と「愛」が彼女の原動力なんですから。それに「会いたいから焼いちゃおうアップルパイ」なんだから、LOVEを伝えるためだけにケーキを作るのだって、ありだと思いませんか。
■その後の展開とその他の小ネタ
・デレステのMVの振り付け
実は初期レアのポーズが取り入れられています。
・[プライベート・メイド]のリボン
背中のリボンの裾には「pie princess」の文字が。
・2017年のホワイトデー
「各アイドルに合うお菓子をプレゼントしましょう!」というちひろさんの無茶振りによって、「調理法」「味」「見た目」を組み合わせてアイドルにプレゼントを作る、という企画がありました。
で、十時愛梨は当然のごとく「アップルパイ」
「思い出いっぱい」というところが、また担当には嬉しいところですよね。
・13番に縁のあるアイドル?
「アップルパイ・プリンセス」が2013年1月23日発売の「THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 013」であることは冒頭で述べたとおりですが、その後、ユニットに参加した楽曲の「Sweet Witches' Night ~6人目はだぁれ~」は2017年9月13日発売の「STARLIGHT MASTER 13」。
とくに13が何か推されているわけではないので、偶然の一致と思いますが、「十二時でも解けない魔法」と歌っていたアイドルが「13」に縁があるのも面白いところです。
■おわりに
様々な切り口で「アップルパイ・プリンセス」について掘り下げてみました。
CINDERELLA MASTERシリーズが各アイドルにとってそれぞれ大切な曲であることは確かですが、「アップルパイ・プリンセス」と十時愛梨は、 単に「初ソロ曲」や「持ち歌」というレベルを超えた密接な関係にあるんじゃないでしょうか。
ぜひまた一度、聴き返してみて頂けると(そしてお持ちでない方はぜひこの機会にご購入頂けると)幸いです。
▼他の楽曲についてはこちら▼
楽曲解説 カテゴリーの記事一覧 - think Airi project
*1:YoutubeじゃなくてWindows MediaとRealAudioでの再生なのが時代を感じる
*2:このあたりの話はニコニコ大百科に似たようなことが書かれているが、追記したのは実は私である
*3:このあたりの話もニコニコ大百科に似たようなことが書かれているが、追記したのは実は私である、がマウントを取りたいわけでなく、誰か気づいた方は都度十時愛梨関係の記載を充実させて頂けると幸いである
*4:ちなみにこれ、「Kawaii make MY day!」と真逆にあるとも言える。「会いたい→アップルパイ焼く→おしゃれしたら暑い」⇔「自信を持ちたい→かわいくなる→オシャレをしたから会いたいな」
*6:アップルパイのレシピ・作り方|りんごやA水を使った料理|味の素パークの【レシピ大百科】
*7:Tea Bagを買いに行くことを出掛けた主目的と捉えて、自分の家に帰るのを「あの街」と呼んでいる、という解もなくはない。